日亜対訳クルアーン写経ブログ

(出典元) 中田孝[監修]・中田香織・下村佳州紀[訳]『日亜対訳 クルアーン [付] 訳解と正統十読誦注解』、松山祥平[著・訳]「クルアーン正統十読誦注解」、黎明イスラーム学術・文化振興会[責任編集]、作品社、2014

解説

『やさしい神さまの話』の元になった『タウヒードについての書簡(Ris±lah fµ al-TawƵd)』の著者アルスラーン・ブン・ヤークーブ・アル=ディマシュキーはダマスカスで没したイスラーム学者ですが、その生涯については殆ど何も知られていません。没年についてさえイスラーム暦540年から711年まで諸説あります。彼が導師を勤めてイスラーム学を講じたモスクに隣接する廟内の墓碑銘には540没と刻まれていますが、『アラブ著述者総覧(MuÔjam al-MuÕallifµn)』にはイスラーム暦699年(西暦1300年)没と記されています。  しかし彼はその『タウヒードについての書簡』によってイスラーム学の歴史に名を残しています。同書は邦訳でA4の用紙で3枚足らず小品ながら、多くの注釈書が著されています。そのうちザカリーヤーゥ・アル=アンサーリー(926/1520年没)の注釈『大慈者の開示の書(Kit±b FatÆ al-RaÆm±n)』とアリー・ブン・アティーヤ・アラワーン・アル=ハマウィー(939/1530年没)の注釈 『大慈者の開示の注釈(SharÆ FatÆ al-RaÆm±n)』はムフタル・ホランドによる英訳が出版されています。(Shaikh Walµ Rasl±n Ad-dimashqµ, Concerning the Affirmation of Divine Oneness, 1997, Al-baz Publishing, Florida)『やさしい神さまの話』はアブド・アル=ガニー・アル=ナーブルスィー(1143/1731年没)による同書の注釈書『酒屋の芳香と器楽の音色 - アルスラーン師の論考の注釈(Khumrah al-űn wa-Rannah al-AlƱn - SharÆ Ris±lah al-Shaikh Arsl±n, 1997, Makabah al-Q±hirah, Cairo) 』を下敷きとした翻案です。 アル=ナーブルスィーはオスマン朝時代に活躍したイスラーム学者で、クルアーン解釈学、イスラーム神学、法学、神智学などイスラーム諸学の領域で数百点の作品を残していますが、イブン・アラビー(638/1240年没)とその追従者たちによる「存在一性論(waÆdah al-wuj¹d)」の神智学説の擁護者としても有名です。『酒屋の芳香と器楽の音色 - アルスラーン師の論考の注釈』は「存在一性論学派の神智学者としてのアル=ナーブルスィーの特色が色濃く出た作品です。アル=ナーブルスィーの廟はダマスカスのサーリヒーヤ地区にあり、現在も多くの参詣者を集めています。 私たちが『タウヒードについての書簡』の読了免状をいただいたユースフ・アル=バッフール・アル=ハサニー先生はレバノン出身でアズハル大学シャリーア学部を卒業した後、永年カナダでイスラームの普及に努めたイスラーム学者ですが、アブドゥ・アル=カーディル・イーサーに師事したシャーズィリーヤ教団の導師でもあります。 本書の目的は、イスラーム学の神智学の伝統の中で育まれてきた信仰の言葉を現代日本語に移し、その神髄を日本の同胞たちに伝えることにあります。 主が私たちの拙い業を嘉し、本書を手にされた読者諸賢を祝福し給いますように。アーミーン